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平成21年度 卒業式 学長告辞

2010年3月23日更新

皆様、ご卒業おめでとうございます。

今日ご卒業される皆様には、大学で学んだ一つ一つのことが将来の生活の確かな糧となりますように願っています。
また、ご家族の皆様、卒業生のこれまでの生活を支えられた周囲の皆様に、心からお祝いを申し上げます。これまでのご苦労に敬意を表しますとともに、お茶の水女子大学を大切なお子様が学ぶ場として評価いただき、ご支援いただきましたことに心から感謝申し上げます。
そして、この式典にご臨席のすべての皆様に深く感謝申し上げます。

四年間の時を過ごした学舎から旅立つにあたり、学生の皆様の心のうちには、明日への希望と、未知の場所に向かう不安とが渦巻いていることでしょう。たし かに、今、皆様が新たな一歩を踏み出そうとしている社会は、経済状態も混沌としたままですし、決して見通しの明るいものではありません。ですが、皆様がこ の大学で学んだことはいかなる場面でもきっと役立ち、そして支えとなるに違いないと確信しています。
なぜなら、分野を問わず専門的な学問を通して、常に、知識を確認し、思考し、批判し、そして新たに創造することを、このお茶の水女子大学で皆様は学んでいらしたに違いないからです。とくに、卒業論文や卒業研究の過程でそれを強く実感したことと思います。
私自身この大学で学び、授業やゼミや研究会での発表、友人や先輩との交流、そして先生方の厳しくも寛大なご指導を時に思い出しますが、学生時代のさまざまな経験が、いま、事柄に対処するときの大きな支えにもなっています。

社会や経済情勢も含めて、私たちが置かれる環境や出会う状況は常に変化してゆきます。その中で、状況を理解し、可能性を探り、判断することはいつの時代 でも誰にも求められます。とくに高等教育を受けた者には、さまざまな場面で判断が委ねられる機会も多くあることでしょう。それに足る十二分な力を皆様が身 につけてきたことを評価して、今、学位を授与いたしました。
その力を携えてこれからは社会を先導して行っていただきたいと思います。

お茶の水女子大学は、135年前に東京女子師範学校として創設された時から、60年前に、新制の国立大学となって今日に至るまで、一貫して、女性の高等教育と自立、そして社会への貢献を使命としてまいりました。
そしてこの使命は、大学にかかわるすべての人々の並々ならぬ努力によって果たされ続けてきました。
創設された当時と今日との違いをあえて挙げるとすれば、かつて、教員として女性が経済的に自立し、同時に国の教育水準の向上に貢献することが求められて いた時とは異なって、現在では、多様化する社会を、多様性のままに発展させ、知的な基盤を充実させ、学問を進歩させるための教育が重要になっているといえ るでしょう。
さらに、その際に、女性も男性もそれぞれの能力を主体的に発揮出来る社会の実現に寄与することも、今とくにこの大学に課せられている使命であるといえます。

国際的に目覚ましい経済発展を遂げ、教育水準や平均寿命の点で日本が世界の上位に位置しているにもかかわらず、女性の活躍の割合を示す指数では、世界 109の国々の中で57位に位置しているといわれています。この問題を解決する方策が多岐にわたって検討されていますが、別の視点からいえば、この事態 は、高等教育を受けた女性が活躍する場が多く残されていること、そして活躍が大きく期待されていることを示しています。
しかしながら、そのような場があらかじめ準備され、用意されているわけではなく、皆様一人一人がそれを見出し、開拓し、あるいは、自ら作り上げて行かな ければなりません。そして、その努力によってこそ閉塞したように見える社会を、ゆっくりとではあれ、新しい方向に導き、始動させることができるのではない かと思います。

科学の急速な進歩と高度な技術の開発を基盤として、経済的な豊かさを実現し、生活の利便性を享受ながらも、その先が見通せない現代、皆様には大きな期待が寄せられ、多くの可能性が開かれています。

「人間において偉大な点は、それが一つの橋であり、目的ではないことだ」というニーチェの言葉があります。
Was gross ist am Menschen, das ist, dass er eine Bruecke und kein Zweck ist.

私たちの日々の生活にあっては、必ずしも目的は明確ではなく、正解があるのでもなく、到達点が決まっているわけでもありません。社会は変化し、一つ一つ の判断と決断によって歴史は刻まれ続けます。私たちは自らが置かれた状況の中で、それを解釈し、理解し、判断し、決断し、先へ進んでゆかなくてはなりませ ん。その時に求められるのは、一人ひとりの知的な豊かさと人間としての見識でありましょう。

ニーチェの言葉をさらに広く解釈すれば、人間は一つの「橋」のように、人と人とを結び付ける、文化と文化とを結び付ける、あるいは異なる事柄を相互に結 び付ける存在であるということもできるかもしれません。そしてそれによって、人間の社会に新たな展開をもたらすことが期待されているように思われます。

社会は、経済状況に大きく左右され、人々の振る舞いもその影響を多く受けがちです。ですが、そのような中にあっても、皆様はこの大学で学んだことを心に とどめ、それを活かし、移りゆく時代の中に真理を見極め、一人ひとりが主体性をもってその力を発揮されることを大いに期待しています。

大学もいま、社会情勢の激しい変化の中で独自の存在感を発揮するよう求められています。大学を担う者として、私自身も今の時代の不易と流行をよく見定め て、お茶の水女子大学の本質を失うことのないように努力してまいります。それは決して簡単ではないと思いますが、関係する皆様のお力をお借りして、この大 学の歴史を豊かに刻みたいと思います。
これまで学生でいらした皆様には、これからは大学のよき理解者、批判者として、大学を支えていただきたいと願っています。
そして何より、皆様の「これから」が、お茶の水女子大学がお茶の水女子大学であり続けることを可能ならしめるのだと思います。

皆様が大学生活で刻んだお一人お一人の歴史が、時とともにいっそう豊かに実りゆくことを期待しています。

ご卒業を心からお祝い申し上げます。