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平成22年度 卒業式 学長告辞

2011年3月23日更新

「知を力に 智慧を勇気に 心を寛く」

 

大きな災害の中で卒業の時期を迎えました。
犠牲になられた多くの方々に謹んで哀悼の意を表し、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
被災地が一日も早く復興し、さらに、この国が真に豊かな国として、これまで以上に国際社会で確かな役割を果たす国となることを願い、お茶の水女子大学と して出来るだけの努力をしてまいりたいと思います。卒業生、修了生の皆様には、この大学で学んだ全てを宝とし、糧として、それぞれの立場でなすべきこと、 できることを熟慮し、その実現に全力を尽くすことを期待しています。

この3月には学部生536名、大学院生304名がこの学び舎を巣立ちます。学生の皆様には、それぞれの日々を確実に過ごし、所定の課程を修められた努力を讃え、また、学生がこの日を迎えられたことに対して、ご家族や周囲の皆様のご協力に深く感謝申し上げます。

お茶の水女子大学は、1875年(明治8年)に、御茶ノ水(現文京区湯島)の地に設置された国立の東京女子師範学校を前身としています。現在は東京医科 歯科大学があるところですが、ここには今でも、「女子教育発祥の地」と記された碑があります。本学がその御茶ノ水から大塚に移転したのは、1923年(大 正12年)の関東大震災によって校舎が全壊したことによるものです。その後、他の施設に分散するなどして授業を継続し、1932年(昭和7年)にこの地に 大学本館と徽音堂が竣工しました。
こうしたことから、新たに建設された大学本館は耐震への配慮がなされるとともに、優れた女性を国家が育成するという強い期待の現れとして、本館入口には上質の大理石が使用されました。これを始めとして、この大学に寄せられた大きな期待の証は今も随所に残されています。

このような歴史を歩みながら本学は、高等教育機関として最高の知を学生に教授してきました。「知は力である」ともいわれるように、学生の皆様がこの大学で学んだ知識は必ずや世界を拓く大きな力となるはずです。
その力を育成するために2008(平成20)年度から「21世紀型文理融合リベラルアーツ教育」を開始しました。皆様の中にもこの授業を履修された方が 多くいらっしゃると思います。私たちが日々直面する課題を解決するためには、文系と理系を横断するような専門的知識と広い視点が必要です。新たなリベラル アーツ教育の科目は、この観点から設置されました。かつて、大学院の博士後期課程が新設された時の理念も、既存の専門領域を超えて学際的な視点から新たな 学問分野を構築することでした。さらに遡れば、女子高等師範学校の時代から学生は教科の区別なく修学することが求められていました。本学ではつねに、問題 解決を主眼として、領域を超えうる専門性を追求してきたのです。それは、学生にとって専門的な知識の獲得に加えて、柔軟に判断するための智慧を培う素地と もなっていることと思います。
人は常に何らかの状況の中で生きています。その状況に対して、私たちは「知を力とし」ながら、「智慧を勇気に」変えて立ち向かうことが求められているような気がします。そして、この大学で学んだ学生の皆様はその能力をそれぞれに身に付けていることを確信しています。
今回、まったく予期しない状況を経験して、ともすると私たちは寛容さを忘れがちになることにも気付きました。人を非難し、あるいはその行動を否定するこ とによって自らの安らぎと正当性を得ようとするのは、ニーチェがルサンチマンと批判した考え方に通じるかもしれません。「心を寛く」保ち、寛容であろうと することも、そのような状況の中で心がけなくてはならないことと自戒しています。
未曾有の災害に見舞われた今、私たちはこの大学で培った全てを駆使し、自らが自律して社会の復興に心を傾けたいと思います。

今年度は、卒業式と学位記授与式を通常の形式で行うことは叶いませんでしたが、皆様とこの学び舎で過ごした時間を大切に思い、皆様のこれからのご活躍を期待する気持にはいつにもまして強いものがあります。
いま新たな一歩を踏み出す皆様には、この大学で得た知を力とし、智慧を勇気にかえて、心を寛くもって、事に立ち向かっていただきたいと思います。
ご卒業、学位取得を心からお祝い申し上げ、皆様のこれからの未来が、豊かで輝かしいものでありますようにお祈りいたします。

平成23年3月23日

お茶の水女子大学長
羽入 佐和子