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平成28年度 学位授与式 学長告辞

2017年3月27日更新

平成28年度 学位授与式 学長告辞

本日、学位記を授与される皆さま、まことにおめでとうございます。
また、これまで皆さまの研究生活を物心両面からお支え下さり、お励まし下さいましたご家族やご関係の皆さまに、お茶の水女子大学の教職員を代表致しまして、心から御礼とお祝いを申し上げます。
ご来賓の皆さまには、お忙しくていらっしゃる中、ご臨席を賜りまして、本日の学位記授与式を共にお祝い頂けますこと、心から御礼申し上げます。

このたび学位記を授与されますのは、博士前期課程224名、博士後期課程23名、論文博士5名、合計252名の方々です。そのうち42名の留学生が、中華人民共和国、大韓民国、台湾、ベトナム社会主義共和国、タイ王国、スウェーデン王国、マレーシア、アフガニスタン?イスラム共和国から、本学を留学先として選んで来日され、研究生活を送って来られました。この徽音堂に、日本の国旗と共に、留学生の方々のお国の国旗も掲げてありますが、毎年、国境を越えて、様々な国からお茶の水女子大学大学院に留学生をお迎えすること、そして、本学における特色ある学びと研究生活を経験した皆さまを社会に送り出すことが出来ますことは、私たち教職員にとりまして、とても大きな喜びです。
留学生の皆さまにとって、環境も習慣も異なる異国の地での生活は、きっととても大変であったろうと思います。本日、無事に学位記授与式を迎えることができましたことを、心より嬉しく思っています。

女性が学術研究に従事することさえ難しい時代から、本学の卒業生は、国の内外で研究者として、また教育者として、活躍して来ました。わが国の女性科学者として初の女性理学博士となった保井コノさんは、様々な困難に遭遇しながらも、国の内外で研鑽を重ね、本学の教授として後進の教育に貢献した方ですし、女性で2番目の理学博士となられた黒田チカさんも、それまで女性を受け入れなかった帝国大学に初めての女子学生として入学し、多くの困難を乗り越えて研究を推進し、本学の教授として若い女性たちを育てた方です。また、第二次世界大戦前後の極めて困難な時期に、フランスに渡って、ジョリオ=キュリー夫妻の許で国際的な原子物理学者として活躍した湯浅年子さんは、本学の教授としても活躍され、日本とフランスの架け橋として、研究者交流のためにも尽力されました。当時、女性を受け入れなかった帝国大学で無給の副手として研究を続け、初の女性農学博士となった辻村みちよさん、豊富な海外留学の経験を経てシャム国―現在のタイ王国です―の女子教育に尽力し、その後東京女子大学の2代目学長を務めた安井てつさん、アメリカ留学の経験を活かして『男女共学論』を著すなどの社会的活動を通じて女性の権利向上を広く訴えると共に、日中教育文化交流に尽力し、さらに桜美林学園の創設発展に貢献した小泉郁子さんなどを先駆けとして、現在までに、多くの科学者?研究者が育ち、国の内外で活躍しています。
本学では、今お話した5名の大先輩たちのお名前を冠した「お茶の水女子大学賞」を創設し、それぞれの分野で頑張っている本学出身の研究者の方々を顕彰しています。本年度、保井コノ賞は名古屋大学准教授の佐々木成江さん、筑波大学助教の柴小菊さん、辻村みちよ賞は本学名誉教授の島田淳子さん、小泉郁子賞は東京国立博物館室長の小山弓弦葉さん、黒田チカ賞は国立情報学研究所特任助教の対馬かなえさんと群馬工業高等専門学校助教の工藤まゆみさん、そして湯浅年子賞は、理化学研究所ユニットリーダーの望月優子さんが受賞されました。皆さん、とても素敵な魅力溢れる研究者です。
本日学位を授与された皆さまの中からも、近い将来、これらの賞を受賞される方が出て下さることを願っています。

なお現在も、文系?理系を通じて、学術?研究のみならず、様々な領域で活躍している女性たちの多くが、本学の卒業生、修了生であることに驚かされます。先輩たちの活躍は、後に続く皆さまにとって、ロールモデルとも、また目標ともなり、力強い後押しとなることでしょう。
本学の同窓会である「桜蔭会」では、国の内外でネットワークを作り、素晴らしい先輩たちが、卒業生と修了生たちに向けた様々な支援をして下さっています。現在、本学の並びに同窓会館があり、いつでも門戸を開いて卒業生?修了生の皆さまの様々な相談に対応して下さっていますので、何かの折に訪ねてみて下さい。

現在、私達を取り巻く社会環境は大きく変動しています。世界中で大規模自然災害や、困難な問題が起こり、人々の穏やかな生活が失われている現状があります。世界の多くの国々が、貧困、食糧問題、環境保全、エネルギー問題、高齢化、遺伝子治療?再生医療、安全と平和 など、多くの課題に直面しています。これらの課題に向かい合う時、どうしたら良いのだろうかとたじろいでしまいそうになりますが、でも、どんなに困難な状況にあっても、人類は、勇気を奮い起こして、難しい課題に向き合い解決策を見出して来ました。そうした困難な歴史の中で、学問?研究が果たして来た役割や、学問?研究に携わった人々が果たして来た役割は、決して小さなものではありませんでした。学問?研究は、長い歴史の中で、人々に安全な生活や利便性などをもたらしただけでなく、未来への責任を果たし、未来を拓く勇気を生みだす役割も果たして来たはずです。
これから皆さまは、これまで培って来られた専門的な力を活かしつつ、それぞれの道を歩み始めることになりますね。そして様々な領域で、優れた専門家としての人生を創って行かれることでしょう。研究の道に進んでさらにその専門分野を究めていかれるにしても、学んだ専門知識を社会の現場で活かして行かれるにしても、社会の様々な課題の解決に資するために、それぞれの専門を一層深め、様々な知識や方法を身に付けるために学び続けて頂きたいと思います。
ただ、それと同時に、狭い専門の中だけでの学びでは、自分自身の知識や想像力に限界があることに気付いて頂きたい、そして、その限界を超えるためにたゆまない努力を続けて頂きたいとも思っています。

多様な社会的課題が顕在化し、複雑化している現在、ひとつの専門分野を越えて、複数の多様な専門分野間の協働が必要なことは、各方面からしばしば指摘されています。それらの課題は、とてもひとつの専門分野からだけでは解決の難しいものばかりです。多様な分野との協働を通じて、新しい知識や方法を学べることは勿論ですが、それ以上に、異なる視点からのものの見方や考え方、新たな価値観や想像力の獲得につながることは、皆さまの可能性をさらに大きく広げることになります。
できるだけ多様な人々と、特に異なる分野の人々と意識的に交流することを心がけて下さい。また、社会に出てから、大学での学び直しの機会を利用して頂くこともお勧めしたいと思います。
専門的な研究や仕事に邁進しつつ、異なる学びの機会を作っていくことは、容易ではないかも知れません。でも、専門以外の分野についても多様な学びの機会を持ち続けることは、専門の力をさらに鍛え、強化することになり、皆さまの人生をさらに豊かなものとしてくれるはずです。
お茶の水女子大学では、皆さまの継続した学びを実現するために、種々の教育改革を検討し実施しています。学び直しや新たな分野への挑戦を可能にする制度や、分野横断的に学べるようなカリキュラムを強化し、また、キャリアアップを目指す女性達のための「ビジネスリーダー養成塾」も開講しています。時間のない方々には、様々な公開講座や公開シンポジウムなども活用して頂けると思います。多くの社会人の大学での学び直しを支援するために、大学としてそのような仕組みを更に整備していくことを計画しています。

まだ東日本大震災の復興もままならない昨年4月には熊本地震が起こって、200名以上の死者と2,700名以上の重軽傷者を出し、また42,000件以上の住宅が全半壊したと報告されています。
今日学位記を授与される皆さまの中には、様々な災害で被災された方々への想いを持って、被災者の救援活動や被災地の復興支援活動にボランティアとして参加して下さった方々が少なからずいらっしゃいますね。学校の休みを利用して、東日本大震災の被災孤児や遺児の支援活動に、私たちとご一緒して下さった方もいらっしゃいましたし、継続した被災地訪問を通じて被災者を支える活動を続けた方々、被災地の子ども達の学修支援に奔走した方々など、多くの学生?院生や教職員の方々が、頑張って下さったこと、今も、そしてこれからも、力を尽くして下さっていることには、感動と感謝の気持ちで一杯です。今日、そのような経験も経て、大きな成長を遂げ、本学を巣立って行かれる皆さまの姿は、とても頼もしく、輝いています。

皆さまのこれからの人生において、困難な状況に陥ったり、壁に突き当たったりして、物事が思うように進まない場面に遭遇する事があると思います。夢をもってチャレンジしたにも拘らず失敗することもあるでしょう。でも、チャレンジして失敗することは恥ずかしいことではありません。失敗が皆さんを強くし、新たな力を生み出しますし、周囲の人々への共感や思いやりにも繋がります。失敗しても諦めることなく、歩み続けて下さい。諦めずに歩み続けることが、自分自身を成長させ、将来を拓くことにも繋がります。そして、困難を乗り越えたときには、自分自身への誇りが生まれます。
ただ、一人で頑張らずに、困ったときには、周りの人たちに助けを求めて下さい。そして、いつでも、皆さまの母校であるお茶の水女子大学に、心と体を休めに帰っていらして下さい。悩みを抱えている時だけでなく、嬉しい時、悲しい時、学びなおしたい時---、是非、母校を訪ね、様々な近況も知らせて下さい。どんな時にも、そしていつまでも、お茶の水女子大学が皆さまの母校であることを忘れないで頂きたいと思います。

皆さまに輝かしい未来が待っていることをお祈りして、お祝いの言葉を結びます。
本日は、まことにおめでとうございます。

平成29年3月23日
お茶の水女子大学長
室伏 きみ子