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平成30年度卒業式 学長告辞

2019年3月29日更新

平成29年度 学位授与式 学長告辞

本日、お茶の水女子大学を巣立っていかれる500名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。お茶の水女子大学の教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。
またこれまで、お嬢様たちの学びを物心両面からお支え下さいました ご家族やご関係の方々に、お祝いと共に、御礼申し上げたく存じます。
御来賓の皆さまには、卒業生達の門出をお祝い下さるために、お忙しい中、ご臨席を賜りまして、まことに有難うございます。どうぞこれからも、若い卒業生達の行く末をお見守り下さいますよう、お願い申し上げます。

さて、お茶の水女子大学での学生生活は、いかがでしたか。入学前に抱いていた夢や希望を実現することができたでしょうか? 良き友人を得て楽しい大学生活を送ることができた方、十分な学びの成果を挙げて夢を叶えることができた方もいらっしゃるでしょう。でも一方で、悩んだり、挫折を味わったりして、辛い経験をされた方もいらっしゃるでしょうね。そういった経験全てが、皆さまの人としての成長を促し、今の皆さんを作り、さらには将来を開拓していく力を培っているのです。
今、卒業という節目を迎えて、これまで歩んできた道を振り返り、ご自分たちの成長を確認して、自信を持って頂きたいと思います。そして、皆さんを支えて下さったご家族やご関係の方々に感謝の言葉を伝えて下さい。皆さんが勉学に励むことができる環境を整え、皆さんの健康や幸せを祈り続けて下さった方々へのお礼の言葉を、心に思っているだけでなく、是非、口に出して伝えて頂きたいと思います。

ところで、本日卒業される皆さんは、ほぼ全員が、平成生まれの方々ですね。1989年1月に昭和天皇が崩御され、「平成」の時代が幕を開けました。それからほぼ30年を経て、今年4月30日に今上天皇が退位されることとなり、平成の時代が終わろうとしています。では、皆さんが生まれて育ってきた「平成」とは、どんな時代だったのでしょうか?

日本では、昭和の末期から続いたバブルが崩壊して、景気が低迷し、失業者や貧困層の増加を招くこととなりました。
インターネットによる情報の入手が容易になった一方で、人と人とのつながりが希薄になり、また、少子化と超高齢化も進んでいます。30年の間には、オウム真理教事件のような悲惨な事件もありました。そして、1995年1月17日の阪神淡路大震災、2011年3月11日の東日本大震災をはじめとする、未曽有の災害が日本を襲い、多くの被害を出しました。
特に、東日本を襲ったマグニチュード9.0という巨大地震は、太平洋沿岸を中心にとてつもなく大きな津波を誘発して、多くの人々の命や財産を奪いました。さらには、地震と津波によって引き起こされた東京電力?福島第一原子力発電所の事故によって、多くの人々がふるさとを離れることを余儀なくされ、震災後8年を経た今も、未だ復興が進んでいないのが現状です。被災者の方々が、ふるさとに帰れる日までの道のりはまだまだ遠いとしか思えません。

世界では、先ず、平成の幕開けの年、いくつかの大きな出来事がありました。中国で天安門事件が起こり、昭和の時代の世界的な負の遺産であったベルリンの壁が崩壊しました。そして年末には、米国のブッシュ大統領 とソビエト連邦のゴルバチョフ書記長が、マルタ会談において「米ソ冷戦」の終結を宣言し、平和な世界の到来を期待させました。
しかし各地で頻発する内乱や、2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロをはじめとする世界の混乱は、日本で過ごしている私たちにとって予想だに出来ないものでした。世界中では、まだまだ多くの人々が、紛争に巻き込まれ、宗教や人種、政治的立場といった様々な理由で迫害を受けたり、生命の安全を脅かされたりしているのです。

国の内外の多くの人々が悲しみや不幸に見舞われている状況がある中で、皆さんには、日々の普通の暮らしが穏やかに続くこと、人々が信頼し合い手を取り合って暮らせることの大切さを、忘れないで頂きたいと願います。
そして、大きな社会的な不幸の中で、自分に何ができるかを真剣に考え、弱い立場にある人々への温かい視線を忘れずに実際に行動することで、日本と世界の人々の幸せのために、自分たちに何ができるかを問い続けながら、それぞれの道を誇り高く歩んで頂きたいと願っています。
悲しいことも多かった平成の時代でしたが、その中で、日本が他国との争いに巻き込まれたり、他国の人々の命や財産を奪ったりすることがなかったことは、とても幸せなことだったと思います。平和を希求し、人々の安寧と幸せを守ろうとする日本人の姿勢は、世界に誇れるものであり、これからもずっと、未来に向けて維持していくべきものと考えています。 

こうして、現在の人類社会を顧みますと、今、私たちの社会がかつてないほどの激しい変化の中にあることが分かります。世界中の情報をリアルタイムで入手できる中で、皆さんは、その情報の選別に苦慮したり、変化の速さの中で立ちすくみ、自信を失ってしまったりすることもあるだろうと思います。
でも、皆さんは、お茶の水女子大学での生活の中で、様々な力を身につけて来られたはずです。混沌とした社会を、自分自身の力を試すチャンスととらえて、持てる力を十分に発揮して頂きたいと思っています。
変化に流されることなく、変動する社会をしっかりと見つめ、時にはそれを楽しむ気持ちも持ちながら、確固とした自らの考えを構築して、それぞれの道を歩んで行って頂きたいと願っています。そして、本学の教育の中で培った「しなやかな知性」を十分に発揮して、人類の将来が明るいものになるように、それぞれの道で努力し、貢献して下さることを願っています。

皆さんもご存知のように、本学は1875年に、わが国初の女性のための高等教育機関として設立され、2015年、皆さんが1年生の時に、創立140周年を迎え、記念式典や様々な行事を執り行うことが出来ました。
この140年余りの歴史の中で、本学の卒業生は、女性が学術研究に従事することさえ困難であった時代から、国境を越えて活躍して来ました。国の内外において学問研究を修め、研鑽を積んで、日本で初の女性理学博士となった保井コノさんや、帝国大学が初めて女性に門戸を開いたときに、初の女性帝国大学生となった黒田チカさん、また、第2次世界大戦前後の極めて困難な時期に、フランスに於いて原子物理学者として活躍し、日仏研究者の架け橋ともなった湯浅年子さん、女性を受け入れなかった帝国大学で無給の副手として研究を続け、初の女性農学博士となった辻村みちよさん、豊富な海外留学の経験を経て、当時のシャム国の女子教育に尽力し、その後東京女子大学の2代目学長を務めた安井てつさん、アメリカ留学の経験を活かして女性の権利向上を広く訴えると共に、日中教育文化交流に尽力し、さらに桜美林学園の創設発展に貢献した小泉郁子さん、そういった方々を先駆けとして、現在までに数多くの科学者?研究者?教育者などが育ち、国の内外で広く活躍しています。わが国初の女医として知られている荻野吟子さんも、本学を卒業後、幾多の困難を乗り越えて、医師となった方です。
現在も、多様な場で活躍している女性たちの多くが、本学や本学の附属学校の出身者であることに驚かされます。大切な役割を持つ人々の会議に出席したときに、そこに出席している数少ない女性の半数以上が、時にはそのほとんどが本学や附属学校の卒業生で占められていることすらあることにはびっくりします。例えば、86の国立大学の学長会議があるのですが、これまでの十数年間、1~3名でしかなかった女性学長が、4月から4名に増えるのですが、その半数である2名の女性学長が本学の卒業生です。 こうした多くの先輩たちの活躍は、後に続く皆さんにとって、力強い後押しとなってくれることでしょう。

皆さんが参集して下さっているこの講堂が「徽音堂」と名づけられていることは、入学式の際にお話しました。覚えていらっしゃいますね? 美徳ある人に育っていただきたいという願いを込めたこの徽音堂に、いま、日本の国旗と共に、本日卒業の佳き日を迎えられた留学生の方々のお国の旗が掲げてあります。今年は、学部、大学院を合わせて、中華人民共和国大韓民国台湾、ベトナム社会主義共和国、インドネシア共和国、スロバキア共和国、タイ王国、シンガポール共和国、モンゴル王国、アフガニスタン?イスラム共和国、エジプト?アラブ共和国の11カ国からの留学生の皆さまが本学を巣立っていかれます。また、多忙を極める公務の中で、数年間に亘って研究を続けられたウガンダ共和国大使に、本日、論文博士号を差し上げることになっています。

本学は、小さな大学ですが、留学生の受け入れや、海外留学の推進にとても力を入れています。そして、学内にもグローバルな環境を作って、多様な人種、国籍、文化、宗教等の背景を持つ若者たちが、互いに理解し合い、力を合わせて目標を達成することを後押ししています。卒業される皆さまの中にも、海外で研鑽を積んだ方が、多数いらっしゃいますね。
正門横に、「国際交流留学生プラザ、Hisao & Hiroko TAKI PLAZA」と名付けられた、本学の輝かしい未来を象徴するような美しい建物が、来週竣工を迎えます。この施設は、本学の学長特別顧問でいらっしゃる「ぐるなび」創業者の滝久雄さまご夫妻からの多額のご寄附によって建設の運びとなったもので、東京オリンピック2020に向けて建設中の国立競技場の設計者でいらっしゃる隈研吾さんが設計して下さいました。中には、日本の世界的な芸術家の方々の手による美しいパブリックアートが設置されています。
また、数多くの卒業生、ご関係の皆さま、教職員からのご寄附によって、同窓会コモンズを併設することが出来ました。本学に集う人々の長い間の夢であった国際交流、世代間交流、地域交流の場としての、素晴らしい施設が間もなくオープンします。
皆さんの卒業までには間に合いませんでしたが、是非、卒業後に、プラザを訪ねて下さい。様々なお集まりが出来るような、いろいろな部屋を用意してありますし、少ない数ではありますが、宿泊施設も作りましたので、末永く利用していただけると思っています。
大学の同窓会である「桜蔭会」の事務室や会議室なども、コモンズに設置されて居て、同窓会の先輩たちが、卒業生の様々なネットワークを通じて、若い方々の活躍を支援して下さいます。是非、同窓会のフレッシュなお仲間として、同窓会コモンズを活用して頂きたいと思います。

お茶の水女子大学を巣立ってからは、社会の現場に出ていく方も、また引き続き大学院へ進学する方もいらっしゃいますね。希望に胸を膨らませて、広い世界へと羽ばたいて行かれるわけですが、どんな道を選ぶとしても、少々困難と思われることにもチャレンジする勇気と、失敗しても諦めない強さを持って頂きたいと思います。長い人生では、思いがけないことが起こります。とても困難な場面に遭遇したり、壁に突き当たったりして、思うように物事が進まないことが少なからずあると思います。人生の谷に差し掛かって、諦めたり逃げてしまいたくなったりすることもあるでしょう。でも、諦めてしまったり、逃げてしまったりしたら、それまで努力して来たことが無駄になってしまいます。
チャレンジして失敗することは、決して恥ずかしいことではなく、失敗という経験は、皆さまを強くし、成長させ、将来を拓く力を創ることにもなるのです。諦めることなく、目標を目指して飛び続けて下さい。
時には、長く低空飛行を続けなければならない時期もあるでしょうし、心と体を休めなければならないこともあるでしょう。それでも諦めずに飛び続けて頂きたいと思います。そうすれば、また高く飛べるときが来ます。困難に出会って悩み、それを乗り越えた経験は、周囲の人々への思いやりの心や共感を育てますし、それらの経験から自分自身への誇りも生まれます。
でも、困ったときには一人で悩んだり苦しんだりせずに、是非、周りの人たちに助けを求めて下さい。皆さんが周囲の人たちに思いやりを持つのと同じ様に、皆さんを思いやり、助けて下さる方がいらっしゃるはずです。
そして、いつでも、皆さんの母校であるお茶の水女子大学に、羽を休めに帰っていらして下さい。辛い時も、悲しい時も、そして嬉しい時も、どんな時も、お茶の水女子大学は、皆さまを喜んでお迎えします。学問の進展に対応して、学びなおしたくなった時や、新たなキャリアを求めて異なる分野での学びを深めたくなった時にも、是非、お茶の水女子大学に帰っていらして下さい。お茶の水の扉はいつでも皆さんに開かれています。

最後にひとつ、生物学者としての私から、皆さんにお伝えしたいことがあります。それは、皆さんが今ここにあるのは、奇跡ともいえる出来事なのだということです。皆さんの命は、40億年もの生命の歴史の中で、途絶えることなくつながって来ることが出来た、貴重なたった一つの命です。そして、一人ひとりの命は、たくさんの人に繋がっていて、決してその人だけの命ではないのです。今後、どんな苦難に出会っても、病に苦しむことがあっても、諦めないで頂きたいと思います。そして、夢を実現するために、また、何事かを成し遂げるために、自分自身と周囲の人たちの命を守ることの大切さを忘れないで頂きたいと思います。
いつもご自分の心と体の健康に気をつけて、気になる事があったなら、すぐに周囲の人たちに相談したり、診察を受けたりして、健康を取り戻す努力をして頂きたいと思います。そして、是非、夢をかなえ、多様な場で活躍して頂きたいと願っています。

私たちは、本学で共に学んだ皆さんを誇りに思っています。同様に、皆さんも、本学の卒業生であることに誇りを持って、これからの人生を理想高く歩んで下さい。
皆さんの輝かしい未来をお祈りして、お祝いの言葉を結びます。
ご卒業、まことにおめでとうございます。           

2019年3月22日
お茶の水女子大学長
室伏 きみ子