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ゴカイと暮らす“ぺったんこ”なカニの新種を発見!

2018年1月18日更新

~小笠原海域生態調査の成果~

※本件は、東京都、お茶の水女子大学との同時発表です。

発表者 

  • 吉田 隆太 (お茶の水女子大学 湾岸生物教育研究センター 特任助教 )
  • 成瀬 貫 (琉球大学 熱帯生物圏研究センター 准教授)
  • 佐々木 哲朗 (小笠原自然文化研究所 副理事長)

ポイント

  • 東京都が実施した小笠原海域生態調査において、ゴカイと共生するカニの新種を発見、ペタンココユビピンノと名付けた。
  • ペタンココユビピンノはゴカイ類と共生するカニのコユビピンノ科というグループに属し、小笠原諸島の海域からこのグループのカニが発見されたのは今回が初めてである。
  • 甲羅を前後に押しつぶしたような特徴的な形はゴカイの棲管にピッタリ収まるようにできており、棲管のなかを横移動していると考えられる。

概略 

東京都は世界自然遺産の保全に役立てるため、2013年から2017年の5年間にわたり、小笠原群島3列島約80地点において海洋生物調査を実施した。
2016年に実施した聟島(むこじま)列島の調査で新種のカニが発見された。この新種のカニは、ゴカイ類と共生するコユビピンノ科というグループに属し、甲羅を前後に押しつぶしたような形をしていることから「ペタンココユビピンノ」と名付けた。小笠原諸島の海域からのコユビピンノ科のカニが記録されたのは、今回が初めてである。
このペタンココユビピンノは、海底の石の下に潜むフサゴカイ類の棲管の中から発見されたため、フサゴカイ類が生息する環境にのみ生息していると考えられる。
今回の新種が発見された理由として、小笠原群島3列島の様々な海洋環境を網羅的に調査できたこと、そしてスキューバ潜水を用いて海底に潜む底生生物相を詳細に調査できたことがあげられる。この調査では他にも様々な発見があり、小笠原群島の海洋環境には基礎的な調査が不足していることが示唆されるとともに、今後もこうした地道な基礎調査を行なっていくことが必要である。

一般向けの詳細 

小笠原諸島の陸上生態系は、植物、カタツムリ、昆虫などで固有種の割合がとても高く、また現在進行中の生物進化がみられることから、2011年に世界自然遺産に登録された。このユニークな自然環境を将来にわたって維持していくために、陸上とつながりのある海域もセットで保全することが求められている。しかし、小笠原海域の自然環境は陸上に比べて調査が進んでおらず、未知な点が多く残されている。東京都は世界遺産の保全管理に役立てるため、2013年から2017年の5年間にわたり、小笠原群島の聟島(むこじま)列島、父島列島、母島列島の3列島約80地点の様々な海洋環境において、サンゴ、甲殻類、軟体動物、棘皮動物、魚類などを対象に生物相を調査した。この調査は、地元のNPO小笠原自然文化研究所が受託し、小笠原海域に熟知した島内在住のダイバーと島外の専門家で構成したプロジェクトチームを立ち上げて行った。その結果、日本初記録種30種、小笠原諸島初記録種261種を含む、1500種を超える海洋生物の生息を確認した。
2016年に実施した小笠原海域生態調査において、聟島(むこじま)列島から新種のカニが発見され、甲殻類の専門家であるお茶の水女子大学湾岸生物教育研究センターの吉田隆(りゅうた)特任助教と琉球大学熱帯生物圏研究センターの成瀬貫(とおる)准教授の共同研究として国際学術雑誌「Tropical Zoology」に論文として発表した。この新種のカニはゴカイ類と共生するコユビピンノ科というグループに属し、甲羅を前後に押しつぶしたような形をしていることから、和名「ペタンココユビピンノ」(学名Takedactylus compressus) を与えた(図1)。小笠原諸島の海域からのコユビピンノ科のカニが記録されたのは、今回が初めてである。
ペタンココユビピンノは、聟島(むこじま)列島の水深10~15mの海底にすむフサゴカイ類(図2)の棲管(せいかん)(*)図3)から見つかった。棲管はくずれやすく、中に入っているカニを全て取れていたか確認しにくいが、ある一つの棲管ではペタンココユビピンノが雌雄1個体ずつ入っていた。この棲管は、海底の砂地に埋まった石の、埋まっている部分に貼り付いており(図3)、砂をまとった細長い蛇のように曲がりくねっていた。興味深いのは、この“ぺたんこ”の体がストローのように中空な棲管にぴったり収まるようになっており、一見窮屈そうだが棲管のなかを左右に動く分には申し分ない体型になっているように見受けられた。
ペタンココユビピンノとフサゴカイ、両者は同じ棲管から見つかったことから共生していると考えられる。コユビピンノ科の中にはフサゴカイ類と共生する種も珍しくなく、それらはフサゴカイ本体にしがみつくなどして寄り添って発見されることが多い。しかしペタンココユビピンノは、同じ棲管でもフサゴカイ本体とは離れた位置から発見されており、他のコユビピンノ類と若干異なる習性が認められた。今回のように、フサゴカイ類の棲管ごと採集しなければ本種の発見に至らなかったはずであり、今後この方法により、本種のさらなる分布記録、もしくは同様の習性をもった近縁種が発見される可能性もある。
今回の新種が発見された理由として二つのことがあげられる。一つは、小笠原群島3列島約80地点もの多様な海洋環境を調査したことが発見につながったと考えられる。今回の新種は、父島列島と母島列島から見つかっていないことから、3列島の網羅的な調査が功を奏した結果である。もう一つは、スキューバ潜水を用いて石の下や砂中に潜む底生生物相を丹念に調べることができたからと考えられる。直接海に潜って手頃な石をひっくり返して、注意深く観察することで今回のような新種が見つかった。このことから、小笠原群島の海洋環境には基礎的な調査が不足していることが示唆されるとともに、今後も新たな発見が期待できる場といえる。
世界自然遺産に登録された小笠原諸島の生物多様性や生態系の成り立ちを理解し、保全していくためには、こうした地道な調査を今後も続けていく必要がある。

*)棲管:ゴカイ自身の分泌物や周りの砂などを固めて作られた管状の住処。外側は砂などの付着物でごつごつしているが、内側は分泌物によって滑らかになっており、細長く柔らかい体でも棲管の中をスムーズに移動でき、外敵に襲われたときも素早く棲管の奥へと隠れることができる。

発表論文

Naruse, T. Yoshida, R. (2018) Two new species of Aphanodactylidae (Crustacea: Decapoda: Brachyura) from the Ryukyu and Ogasawara Islands, Japan, with the establishment of a new genus. Tropical Zoology. Pages 1-13. Published online: 10 Jan 2018. DOI: https://doi.org/10.1080/03946975.2017.1395163

参考図

図1
図1.聟島(むこじま)列島から発見された新種「ペタンココユビピンノ」。 
上が雄、下が雌。スケールバーは3 mm。

図2
図2.棲管から取り出したフサゴカイ類の一種の本体。

図3
図3.砂でできた蛇のようなフサゴカイ類の棲管。
この中にフサゴカイとペタンココユビピンノが一緒に暮らしている。右上はその棲管の断面を示す。

 

問い合わせ先

研究に関する問い合わせ先

お茶の水女子大学 湾岸生物教育研究センター特任助教 吉田 隆太
電話:0470-29-0838
Email:yoshida.ryuta@ocha.ac.jp

取材に関する問い合わせ先

お茶の水女子大学 企画戦略課(広報担当)高木、小林
電話:03-5978-5105
Email:info@cc.ocha.ac.jp